こんにちは。元公立小学校教員歴15年の、さとさとです。
さて、今回は音読の宿題について。
小学校の宿題の定番といえば音読ではないでしょうか。
しかし、そんな音読の宿題ですが、親からするとこの上なく面倒くさいものですよね。
時間はとられるし、ちゃんと聞いてあげないといけないし、しかも評価までしなくてはならない…
中には、音読カードにとりあえずサインだけしているというご家庭もあるのではないでしょうか。
そんな音読の宿題ですが、長年宿題として出され続けている以上、理由があるはずですよね。
そこで今回は、音読のメリット、デメリットについて書きたいと思います。
ぜひ、やるからには正しい音読を!
そして、お子さんの成長の手助けになれば幸いです。
音読のメリット
メリット1.低年齢の子は、音読したほうが理解できる。
大人からすると、わざわざ声に出して読まなくても、黙読の方が理解できるのではないか?と思う方も多いと思います。
でも、実は黙読で理解できるのはある程度大きくなってからなのです。
音読と黙読による理解度の違いについては様々な研究がされています。
およそ、小学校中学年辺りを境に、低学年までは音読の方が有効、高学年では黙読の方が有効であるという研究結果が多いです。
中学生になったら、音読の宿題なんてありませんよね(笑)
メリット2.読み能力の低い子は、音読したほうが理解できる。
こちらは、年齢に関わらず、読み能力の低い子は、音読の方が理解できるという研究結果があります。
ちなみに、読み能力の高い子は、音読と黙読による理解度の差はあまりないそうです。
(音読でも黙読でもどちらでもよい)
メリット3.文字を、頭の中で音声化するための訓練になる。
大人が黙読できるのは、文字を頭の中で音声にして読むということが自然とできているからです。
小さい子どもは、この「音声化」ができません。
音読を続けていくと、少しずつ「頭の中で音声化」ができるようになってきます。
そのための練習として、音読することが小学校低学年辺りまではとても大切です。
音読のデメリット
デメリット1.内容を考えずに、ただ読んでいるだけの子もいる。
これは、「音読カード」に原因があります。
多くの小学校では、音読カードに「読んだところ」「回数」「大きな声で」「はっきりと」「点や丸に気を付けて」といった項目があると思いますが、「大きな声で」「はっきりと」読むことに集中すれば、当然内容の理解はおろそかになります。
むしろ、内容などどうでもいいから、スムーズに読めるようにすることが目的のようにも感じます。
もちろん、ちゃんと読めるようになったという自信をつけさせてあげることも大切ではあると思いますが、本来、読む目的は内容の理解のはずです。
もし、音読カードに「気持ちを考えて」とか、「抑揚をつけて」といった項目があれば、そこを重要視してほしいです。
抑揚をつけるには、登場人物の心情を考えなくてはできませんからね。
そして、音読が終わった時には、一言でいいのでその話の内容に触れる質問をしてみてください。
「この時、〇〇さんは、どんな気持ちだったのかな?」
「この場面、あなただったらどうする?」
など。
音読が、ただの発声練習になってしまってはもったいないです。
デメリット2.黙読の方が理解できる子もいる。
早い子は小学校低学年から、多くの子は中学年~高学年辺りからは、声に出さない黙読の方が理解できる子も増えてきます。
音読は短期記憶に、黙読は長期記憶に向いているといわれています。
そして、黙読の方が文章の全体把握がしやすいともいわれています。
また、メリットの方で書いた逆パターンとして、読み能力の高い子はわざわざ音読をする必要性がありません。
そういった子の場合は、音読するよりも、黙読した方が効果的です。
デメリット3.子どもからしたら、毎回親の評価を受けなくてはならない。
漢字や計算の宿題と違い、音読の宿題には「親の評価」がつきます。
これも音読カードが悪いのです!
子どもからしたら、頑張って宿題をやったのに「はっきりと読めてないからここは△ね」なんて評価をされたらどんな気持ちになるでしょうか。
もちろん、△や×をつけるにしても、「次は頑張ろうね!」と親も子どもも前向きに取り組めるのならいいのですが…。
評価は甘めに、子どもがやる気をなくさないように付けてあげましょう。
正直、僕は、音読カードなんて「読んだところ」と「親のサイン」だけでいいと思っています。
まとめ
以上、音読することのメリット・デメリットについて見てきました。
小学校低学年くらいまでは、やはり音読の宿題は必要だし有効だと思います。
ただ、中学年くらいからは、その子に合った方法を考えるべきなのではないのかなとも思います。
ご家庭によっては、実際には聞いていないけど「本人がやった」といえばサインしている親御さんもいますし、そもそもやっていないけどサインだけはして学校に持たせているという親御さんもいます。
でも、本当に音読する必要性がない子にとっては、それでもいいと思います。
どうせ先生は、音読カードにサインがあるかどうかくらいしかチェックしていないのですから(笑)
(参考)
髙橋(越野)麻衣子(2013). 読解過程における音読と黙読の役割 ―音韻情報の処理に着目した実験的検討― 東京大学大学院教育学研究科博士論文
音読という宿題の危険性について。(3min)|石橋優也/教育家|note
知っておきたい「音読カード」の問題点【先生のための学校】|みんなの教育技術 (sho.jp)
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こんにちは。元公立小学校教員歴15年の、さとさとです。 学校現場で長く働いていると、宿題についてよく悩まされます。 宿題をやってこない子。 学校ではできるけど家ではできない子。 たまに(1週間に1回程度。継続的に。)忘れてしまう[…]