こんにちは。元公立小学校教員歴15年の、さとさとです。
学校現場で長く働いていると、宿題についてよく悩まされます。
宿題をやってこない子。
学校ではできるけど家ではできない子。
たまに(1週間に1回程度。継続的に。)忘れてしまう子。
やってくる時、やってこない時が半々の子。
ほぼやってこない子。
などなど。
いろいろな子がいる中で、個人面談の時によく相談されましたね。
「どうしたら宿題をやってくれるようになるでしょうか。」
「学校から帰ってきたらすぐに遊びに行ってしまって…。」
今回は、宿題をしない理由と、それぞれの対処法をいくつか紹介していきます。
実際に保護者の方から相談されて、うまくいった例もあれば、効果がなかった例もあります。
その子に合った方法を見つけるのが大前提ですが、少しでもヒントになれば幸いです。
宿題を「しない」のか、「できない」のかを見極める
まずは、お子さんが宿題を「しない」のか、「できない」のかを見極めることが必要です。
学力的には十分理解できているのに、「面倒くさい」などの理由で宿題を「しない」子なのか。
それとも、学習内容の理解が不十分で、一人では宿題が「できない」子なのか。
または、発達障害などの理由で「できない」子なのか。
それによって対処法も変わってきます。
自分の子なのである程度は分かると思いますが、とりあえず1週間ほど子どもと一緒に宿題をやるか、見ているかして見極めましょう。
算数はできているけど漢字はできないとか、この教科だけできないとか、そういう場合もあるでしょう。
宿題を「しない」子への対処法
学力的には十分理解できているのに、宿題を「しない」子。
または、なかなかやらない子。
そのような「しない」子に対してはどうしたらいいのでしょうか。
動機づけ
「何かをしよう」という気持ちにさせることを、心理学では「動機づけ」といいます。
この動機づけは、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類に分かれます。
内発的動機づけ
内発的動機づけとは、それそのものがやりたい目的となる動機づけのことです。
宿題の例でいうと、
「今日の算数のここが楽しかったから、家でもチャレンジしてみよう。」
「漢字をいっぱい覚えたいから漢字練習しよう。」
といったように、宿題をやりたいからやるといったものです。
外発的動機づけ
外発的動機づけとは、何らかの報酬を得るための手段となる動機づけのことです。
宿題の例でいうと、
「宿題をやったらゲームができるから頑張る。」
「宿題をやったら友達と遊びに行けるから、宿題をやろう。」
といったように、宿題そのものがやりたい目的ではなく、「ゲームをする」「友達と遊ぶ」という目的を果たすための手段として宿題をやるというものです。
または、
「宿題を忘れると、先生に怒られるから、ちゃんとやろう。」
これも、「先生に怒られないようにする」という目的のために、「宿題をやる」ので、外発的動機づけの一種です。
教育の場面では、内発的動機づけを高めることが有効
ここまで、内発的動機づけと外発的動機づけについて見てきましたが、教育の場面では、内発的動機づけを高めることが有効だとされています。
まぁ、ちょっと考えてみれば当たり前のことですが、勉強が好きで宿題をやっていければ、自分から進んでできる子になりますよね。
一方、外発的動機づけによって宿題をやってきた子たちは、例えば、
「ゲームに飽きてきたから、もうゲームができなくてもいいや。」
「最近友達と仲が悪くなっちゃったから、遊びに行けなくてもいいや。」
となると、目的がなくなり宿題をやる必要性がなくなってしまいます。
または、
「ゲームをしていい時間をもうちょっと長くしてほしい。」
「もうちょっと遅くまで遊んできたい。」
と、要求がエスカレートしていきます。
この、外発的動機づけによる報酬はどんどん上がっていき、やがてこれ以上は上げられないというところまでくると、そこで動機づけがなくなってしまうのです。
結果、宿題をやらなくなります。
その他にも、「学年が変わって先生が変わったとたん、宿題をやらなくなった」という話もよく聞きます。
これは、忘れ物をしてもまったく注意されなかったり、先生に叱られなかったりする場合です。
宿題をやっていかなくても怒られないのであれば、やる必要がないですよね。
特に初任の先生の場合によくあるパターンです。
内発的動機づけを高めるには
では、どうしたら内発的動機づけを高めることができるのでしょうか。
答えは簡単です。
「子どもをほめてあげてください」
宿題をやったらほめる。「えらいね」「ちゃんとできたね」「さすが〇〇」「立派」
宿題は、できて当たり前ではありません。
できなくて当たり前。だって、子どもはもっと他にやりたいことがいっぱいあるのですから。
だから、できたら「すごい」のです。
「歩けるようになった」「言葉をしゃべった」そんなのも、考えようによっては「人間ならできて当たり前」のはずなのに、大人はみな喜んで「すごいね」と言いますよね。
高校生くらいまではそんな気持ちで子どもと接していけたらいいなと思います。
「宿題をちゃんとするといいんだ。」
その気持ちが育っていくと、子どもは自分から宿題をやるようになります。
ほめられなくなったら終わりです。
ですから、ほめる中で、
「でも頑張ってやったんだね。」
「これってなんだろう?」
そうして内発的動機づけを高めることが大切です。
では実際にどうしたらいいの?
では、実際に宿題をやる子にしていくにはどうしたらいいのでしょうか。
入口は、内発的動機づけでも外発的動機づけでもどちらでも構いません。
宿題をやらない子に対して、最初から勉強の楽しさや大切さを説いても、ちっとも届きません。
初めは、「できたらおやつ」「できたらゲーム」でもいいのです。
とにかく「宿題をやる」という習慣をつけるところから始めます。
そして、できたらとにかくほめる。ほめまくる。
ほめるなかで、勉強自体に興味が向くように声掛けをする。
時には親も一緒に宿題をやって、「わからない~」とか、笑いながら取り組むのもいいかもしれません。
宿題をやること自体が「楽しいこと」「いいこと」なんだという気持ちが芽生えるように。
うまくいった例
実際に保護者の方と話をして取り組んだ中で、効果のあったものの例を挙げます。
- 放課後、すぐに遊びに行ってしまう子
→宿題をやってから遊びに行くことを徹底した。
【結果】宿題をやることが習慣化し、忘れることがなくなった。 - 後回しにしてしまう子
→まず宿題をやらないと、ゲームができないというルールを作った。
【結果】早くゲームをやりたいから、すぐに宿題をやるようになった。
→そのうち、習慣化し、家に帰ってきたら宿題をやることが当たり前になった。ゲームもあまり関係なく、宿題に取り組むようになったとのこと。 - なかなか宿題に取り組めない子
→親が一緒に宿題をやる(または近くにいる)ようにした。
【結果】見られているからしょうがなくやりはじめる。
→分からないところがあってもすぐ聞けるし、できたらほめられるしで、宿題をやるようになった。(親は大変…)
→分からないところは後でまとめて聞くようにしていき、ちょっと離れていても宿題に取り組むようになった。
とにかく「習慣化」させることが重要です!
宿題が「できない」子への対処法
一方、宿題が「できない」子の場合はどうしたらいいのでしょうか。
学習内容の理解が不十分で、一人ではできない場合
小学校でいつもやっているテストでいうと、50点~70点くらいの子。
学期のまとめテストで40点~60点くらいの子。
これはもう、親が一緒にやるしかないです。
子どもの立場から考えると、
「宿題をやろうとしても分からなくてできない」
↓
「時間だけが過ぎていく」or「とても時間がかかる」
↓
終わってないとまた怒られる。
↓
宿題なんてやりたくない
と、「できない→怒られる→やりたくない」
の無限ループです。
ですから、親が一緒に見てあげるしかないです。
一人ではできないのに、やらないと怒られるという…理不尽な話ですよね。
または、塾に通わせる、家庭教師をつけるというのも選択肢の一つです。
自分の時間を使って子どもを見るか、時間をお金で買うか。
また、この時、塾といっても受験指導をしている塾ではなく、いわゆる補習塾を選ぶこと。
できれば、集団ではなく、個別で指導してくれる塾の方がいいです。
(学校という集団授業の場で理解できていないので、集団の塾に行かせてもあまり効果は期待できません。)
とにかく、まずはお子さんの学力をあげる、学習内容が理解できるようにする。
それができてきたら、上で書きました「宿題をしない子への対処法」のように、取り組んでみてください。
学力をあげるために、通信教育という選択肢も考えられますが、これも一人で取り組むのは厳しいと思います。
もしやるなら、親も一緒にというスタイルになると思います。
発達障害などの理由で「できない」子
口頭では学習内容も理解できているし、問題にも答えられるのに、「ノートに書く」ということができない子。
問題文を「読む」ことができない子。
漢字は書けるのに、漢字練習ができない子。
発達障害などの理由で宿題ができない子は、いろいろなパターンがあります。
そもそも、発達障害のある子にとって、家で宿題をやるためにはいくつもの壁があります。
例えば、
- 学校で、その日の宿題が何なのか理解すること
- 連絡帳に書くこと
- 家に帰ってきて、宿題をするために道具(筆箱やノートなど)を準備すること
- 問題文を読むこと
- 漢字などの場合、どこに何回書き写すか理解すること
- 計算問題などの場合、どこに計算してどこに答えを書くか理解すること
簡単に挙げましたが、他にも様々な要因がからんできます。
このような場合には、とにかく親が一緒に見ていく中で、何につまずいているのか、どこが分からないのか、ということを分析します。
そして、一人ではできないところはサポートしてあげます。
とにかく、繰り返し繰り返しやっていくなかで、だんだんと定着していきます。
また、未就学児であれば「児童発達支援」、小学生~高校生であれば「放課後等デイサービス」が利用できます。
こちらは、塾や家庭教師とは違い、行政から補助金も出ます。(諸条件あり。世帯所得により、補助金の金額も違います)
その子に合った支援に特化して指導計画を立てていきますので、家で見るよりはるかに効果的です。
放課後等デイサービスについては、施設によって、いわゆるグレーゾーンから軽度の子が中心の施設もあれば、重度の子が中心の施設もあるので、一度行政の相談窓口で相談されるか、施設の体験会に参加されるのもいいと思います。
そして、お子さんが何かしらつまずきや支援を必要としているならば、対応は早ければ早いほどいいです。
将来、大人になったときに、ちゃんと自立した生活が送れるかどうか。
できることは早いに越したことはないです。
まとめ
今回は、学校の宿題をしない子への対処法ということで書いてきました。
多くの子は、宿題なんてしたくないんです。
でも、やらなくちゃいけないんです。
みなさんも、子どものころを思い出してみると、今の子どもの気持ちが分かるのではないでしょうか。
ネット上でも少し調べれば多くの対処法が出てきますが、これで完璧!すべての子に合うといった方法は残念ながらありません。
ただ、いろいろ試していく中で、その子に合った方法が見つかるといいですね。
そして、宿題をすることが「当たり前」になれば、親も子どもも楽になると思いますよ。
(参考)
北尾倫彦/中島実/井上毅/石王敦子「グラフィック心理学」,サイエンス社,1997年
https://www.katsuiku-academy.org/media/motivation-psychology/
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